廃園

一次二次創作を含む世迷言です。何でも許せる方のみどうぞ。あくまで個人的な発言につき、転載、引用はお断り致します。

【祈る君はうつくしい】

 

 祈る君はうつくしい

 

 


 パキリ、と靴底の下で薄い硬質のものがひび入る音がする。
 
「君は何を祈っているんだい?」
「世界の均衡を」
「そうだな……君らしい」
「今は見えぬ小さな星でも、私は祈りたい。………君は何を祈るのかね?」
「僕が? 祈る?」
「うむ。君も先程見上げていたろう。……私では、君の願いを手助けする事は出来ないだろうか?」

 正しい君。誠実な君。

「僕の願いは……『世界の均衡』さ。君と同じにね。その為に『ライブラ』があるんだから」
「……そうだ。そして、君が私の隣にいてくれる事を嬉しく思う」
「何だい改まって! そういう所君は本当にお坊ちゃんだな!」
「む」
「行こう。迎えが来たぞ」

 大地が人血と氷と異形の屍肉に塗れていても、星は変わらず瞬いている。霧の向うの空で。例え微かにしか見えなくとも。

「ひとを疑うって事を知らない……」
「スティーブン?」
「何でもないよ。ほら、ギルベルトさんが待ってる」

 『嘘』にはしないが、『嘘』を吐く
 君の『星』の為に、僕は闇に動こう。血の赤の路を繋いで、夜を背に負って。『星』が輝く為には、雲も霧も澱みも邪魔だ。宇宙に輝く君とは違う、路地裏の泥濘こそ僕の仕事場だ。
 「隣」にはいられない──けれど、君には『星』を見せてみせる

「スティーブン」
「今行く」

 ………君は知らないだろう。私の祈る『星』が、宇宙にはない事を。狂星にも似た紅茶色こそが、唯一祈る『星』である事を。
 君の願いは叶わない。私がその願いを折るからだ。ひとを疑わない? 君は私を知らなさ過ぎる。いつか知らせる──その時はまだ。

 私の唯一──祈る『星』は

 憎み給え赦し給え──諦め給え
 祈る君は、うつくしい