廃園

一次二次創作を含む世迷言です。何でも許せる方のみどうぞ。あくまで個人的な発言につき、転載、引用はお断り致します。

【NO TITLE】


荻のクラステで「お嫁さんのベールみたいに」とかどうでしょう。

 

 

「うわ凄い吹雪だな、殆ど真横じゃないか」
「君は寒さには強いのかと」
「冬の極東を簡単に寒さとか言うなよ。さっさと殲滅するぞ」

正面からぶつかり巻き上がる風が、雪と片割れの男の髪を浚う。流れる白にふと、戦いの前だというのに幻を見た気がする。鼓動がひとつ、跳ねた

 

 

「スティーブン、少しいいだろうか」
「何だい?」
「実は、結婚する事にしたのだ」
「そうかい、そりゃおめで……結婚?! 君が?!」
「うむ」
「……君の事だ、使命もこの街の事も全部熟慮の上で決めたんだろう? なら僕が何を言う事があるんだ。……おめでとうと祝福しても?」
「ありがとう」
「……は、それにしても君は以外と情熱的な男だったんだな。君の心を射止めるとはお相手も相当な御仁だ。……僕とした事が全然気が付かなかったよ。どんな女性か訊いてもいいかい?」
「……賢く、頭の回転が速いひとだ」
「へぇ! プロスフェアも上手いかな」
「プロスフェアはあまり得意じゃないらしい。チェスは対戦してくれるな。周囲に絶えず気を配り、無謀はしない──が、時折幼子のように可愛らしい」
「凄い惚気だ! でも優秀そうだね──ラインヘルツ家とも渡り合えそうかい?」
「問題ない。家には報告済だ」
「素晴らしい、ぐうの音も出ないね! ……その内僕にもお相手の彼女を紹介してくれよ。結婚式には出られそうにないからな」
「そんな事はない」
「おいおい、ライブラのトップ二人揃って空けられる程この街は甘くないぞ」
「挙式はHLで行うつもりだ。……それと」
「?」
「訂正させて戴こう──『彼女』ではない」
「……ま、まぁ確かにこの国での婚姻は認められるようになったが、ご実家は大丈夫か?」
「父も兄も喜んで祝福してくださった。『彼』ならば私の伴侶として相応しいと」
「……意外とオープンなんだな。ちょっと吃驚したよ」
「だから君も安心して出席してくれ給え」
「……行けるか解らないぞ」
「君がいなければ始まらない。母も君に逢う事を楽しみにしてくださっている」
「……何で僕だ」
「強く、賢く、沈着冷静に私をサポートし」
「……」
「誰よりも優しく、可愛らしい」
「……」
「私の背を預け護り立つ君が、私の隣に立つ事に今更何の問題があると言うのだ」
「……ちょっと、待て」
「君の黒髪に白いベールは映えるだろう。母上がご自分のお使いになられた品を直してくださっている」
「ラインヘルツ家伝統の品に何してくれる?! って僕か?!」
「美しいであろうな。私も楽しみだ」
「だから待て! 君が……君が言ってたのって……本当にちょっと待ってくれ」
「三分ほどでいいだろうか」
「紅茶と一緒にするな! 三十路のおっさんに何言ってるんだこのお坊ちゃんが!」
「そういう所が可愛らしい」
「クラァウス!」
「……言っただろう」
「……僕は何も聞いてないぞ!」
「そうではない。私は結婚する、と決めたのだ。君も了承してくれた」
「りょうしょう」
「何を言う事がある、おめでとう、と」
「違うだろうそれ!!」
「……今更、だ。スティーブン」
「クラウス、冗談だろう?」
「私は冗談が得手ではない。それに」
「……」
「君を伴侶に迎える事を、冗談になど出来ない」
「……僕が」
「うん?」
「僕が、嫌だって言ったらどうするつもりだったんだ」
「では又明日話をしよう」
「明日も嫌だって言ったら」
「では明後日も」
「……」
「スティーブン・A・スターフェイズ、星を掲げ、氷を自在に操り」
「……クラウス」
「賢く強く優しい君以外に、捧げる血と心を私は持っていないのだ」
「……」
「……どうか、諾、と」
「……熟慮の上で、決めたのか」
「そうだ、と言っても悩む必要はなかったが」
「……K・Kが言っていた。僕もそう思う。君は「凶悪なまでの頑固者」だ」
「……」
「…変える気はないんだろ?」
「ああ」
「……確かに言ったな、『僕が何を言う事がある』。……降参だ。君の勝ちだが……賞品に文句言うなよ? くたびれてるのは知ってるだろ?!」
「君は誰より美しい」
「その眼鏡、度数が合わなくなってるぞ……恥ずかしいやつだな、君は!」
「裸眼でも君の顔は見える」
「そういう問題じゃない!」


「そういや君結婚式とか恐ろしい事言ってなかったか?」
「ああ、HLでおこな『やめろやめてくれ冗談じゃないぞ!!』」
「秘密結社が何してんだ!」
「ドレスは母上には難しくて」
「当たり前ってかドレス!」
「ギルベルトが君のサイズに合わせてくれた」

 

 

【髪をかきあげて / しびれそう】


「私がやろう」
「君は僕の髪を乾かすの好きだなぁ」
「うむ。それに」
「?」
「……こうすると、君の傷がよく見える」
「いいもんじゃないだろ」
「君の証だ、誇り給え。ここに触れる事を許されている今が私の幸福だ」
「……君、さらっと僕を殺しにくるよな」
「?!」